今後の見通し
市場の二極化が進む
半導体業界は市場の二極化が進んでいます。まず、コンシューマー向け市場については低迷中です。コロナ禍によるテレワークの浸透などによって、ノートパソコンをはじめとした通信機器の需要が急激に高まりましたが、すでにその流れは収まりつつあります。現在は、世界的インフレや金利上昇による可処分所得の減少、経済活動の制限緩和などの要因から、旅行や娯楽といった別の分野に需要がシフトしつつあります。
ただし、エンタープライズ向け市場においては、ウクライナ情勢やアジア情勢などの地政学的懸念の高まり、マクロ経済の減速があったにもかかわらず、自動車分野は需要が高まり続けています。そのため、電気自動車や再生エネルギー関連の開発における需要は今後も続くのではないかと予想されています。
半導体不足について
半導体不足が起きる理由の1つは世界的な需要の高まりです。一方で、貿易摩擦やコロナ禍の影響による工場の停止によってサプライチェーンの目詰まりにつながり、半導体の供給がひっ迫しています。また、工場の老朽化によって生産能力が追い付いていないことも原因として考えられます。
2024年頃まで、半導体不足は続くと考えられています。日本国内においては半導体の安定供給を目的とした設備投資などが行われており、国家主導での取り組みが進められています。半導体の国内生産強化を掲げた戦略が練られ、市場は大きく拡大することが見込まれます。一方で、半導体不足が解消すると同時に供給過剰になるのではという不安の声もあるようです。コンシューマー向け市場で積み増していた在庫が放出されて、通常在庫に調整される過程で供給過多になるのではと考えられています。
今後はどうなるのか
長期的に見れば、半導体業界の需要は高まっていくことが予想されます。マイナス成長は半導体不足となっている近年のみで、今後は市場が拡大し、それに伴い半導体エンジニアの需要も高まるでしょう。また、先端半導体の生産は現在アジアに偏重していますが、今後は各国が国産化を狙った取り組みを進めていきます。半導体業界に対する期待値はどの国でも高まっており、日本においても製造基盤の確保や強化が進められていくでしょう。
半導体はあらゆる分野で求められています。カーボンニュートラルへの取り組みが世界的に進められており、社会基盤を支えるための技術革新において半導体は必要不可欠です。5G関連やIoTデバイス、AIなどの分野においても半導体は欠かせません。社会のデジタル化が進めば進むほど、半導体業界は成長していきます。